WebTransportの方向性 (2021年1月の中間会議をうけて)

WebTransportと呼ばれる新しい双方向通信の仕組みが議論されています。

WebSocketの次世代版とも呼ばれており、QUICやHTTP/3上で動作します。現在、Chrome ではQUIC上で動作する版の実装が進められていたりします (web.dev)

さて、このWebTransportの標準化は、IETFプロトコルを、W3Cでインターフェースの仕様が議論されています。

W3C

IETF

上記の通り、特にIETFではWebTransportの下位層にどのプロトコルを使うかで幾つかの仕様が提出されています。
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昨年秋に行われたIETF109では、WebTransport WGとしてどの仕様の標準化にフォーカスしていくかという議論がありました。(今の所、どの仕様もWG Itemにはなっていません)

特に、over QUIC と over HTTP/3について、片方のみをまず標準化するのか、両方を一緒にすすめるのかといった論点がありました。しかし、そのミーティング中ではコンセンサスが得られず、メーリングリストで継続して議論となりました。

WebTransport WG 中間会議

1月12日、改めてリモートミーティングの場が設けられました。

ChromeでWebTransportの実装者かつ仕様の著者でもあるVictor Vasiliev氏から、まず現在の仕様の状況について共有がありました。(一旦TCPベースの物は横においておくとのこと)

その後、チェアから参加者に対して質問が投げかけれました。

Question 1: number of protocols
Should the working group adopt only one UDP-based transport?

- 1A: only one transport (QUIC or HTTP/3)
- 1B: multiple transports (QUIC and HTTP/3)

まず幾つのプロトコルをWGとして取り扱っていくかに関して、参加者の多くは 1A、つまり一つであるべきと回答し、コンセンサスが得られました。
(ただし、何かしらの事情により二つ目を標準化することもある)

つづけて、2つ目の質問です

Question 2: UDP-based protocols
Which UDP-based option should we adopt as a starting point for WebTransport protocol?

- 2A: WebTransport over HTTP/3
- 2B: WebTransport over QUIC directly (separate ALPN)

over HTTP/3と over QUICの仕様のどちらをWGとして出発点とするか?参加者の半分以上は2A、つまり over HTTP/3を選択し、こちらもコンセンサスが得られました。また、HTTP/3では、コネクションプーリングは一旦行わない方向となりました。

ミーティング内でのコンセンサスは得られたため、続けてメーリングリストで改めて意見を募る形となりました。

結果及び意見募集についてはチェア氏のメールを参照ください
https://mailarchive.ietf.org/arch/msg/webtransport/9k27ZTwBlg9ncsZQXymg-jAfUOA/

資料

ミーティングではその他にも幾つかの議論があったため、詳細はスライド及び議事録を御覧ください